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パネルに文字を入れる

更新日:2022年12月16日



 アンプの自作で一番厄介なのは、パネルの文字入れですね。

 その昔、インスタントレタリングなる便利なシートがありました(2022.8.10現在共立エレショップさんが一桁枚数を在庫されています)。アンプのパネルにレタリングシートを置いて、先端の丸い専用ツール(ステンシル)で、POWER とか VOLUME とかの用意されている単語を擦ります。そうすると、弱い糊の付いた文字がシートからパネルへと転写されました。

 イギリスのレトラセット社からは、数十種類はあったでしょうか、アルファベットのフォントが、それもいろいろなサイズで発売されていました。プロのデザイナーさんや漫画家さんは、スクリーントーンを切り貼りして、レタリングシートの文字を貼って、印刷原版を作っていました。


 タイトル写真のパネルの文字は、すべてレトラセットのレタリングを貼ったものです。機種名"Staatskapelle"も、"Power"や"Input"の単語も、"44.1k"の数字も、一文字ずつ擦りました。我ながら、よくやったものです。

 文字の上下を合わせるためには、もはや使うこともないテクニックですが、文字の両サイドに鉛筆で水平線を描きます。その線を目安に文字の高さを決めます。鉛筆の線は、消しゴムで簡単に消せます。スイッチの中央線上に単語を配置するには、真ん中の文字から擦ります。真ん中から両サイドに一文字ずつ入れるとピタッと仕上がります。


 レタリングは、転写しただけでは、ちょっとモノが当たると擦り取られたり欠けたりします。ですので、レトラセット社のレトラコートなるレタリング保護剤をスプレーして、その上にツヤ消しラッカーをスプレーしました。文字と周囲だけ穴を空けたマスキング用の紙を作り、そこだけにラッカースプレーが吹きかけました。タイトル写真のパネルも、文字の周囲だけ少しパネルが白っぽく映っていますが、スプレーされたエリアです。


 ちなみに、下の写真の右がレトラコートです(いまは売っていません)。左は、今回使用した水性スプレーです。30年前は水性は油性に及びませんでしたが、最近のものは優れています。水性スプレーで十分な皮膜ができます。ツヤ消しを選ぶのがポイントです。



 いまでは Adobe の Illustrator を使えば、簡単に原版を作れます。レタリングを貼る人はいなくなり、レトラセット社もなくなり、インスタントレタリングも製造されなくなりました。パネルの文字入れも、できなくなったと諦めていました。


 ところで最近、エーワンの転写シールをみつけました。インクジェットプリンタの出力から転写シールが作れます。“タトゥーシールがつくれる!”なら、パネルのレタリングも作れるでしょう。

 フォントは、Windows にあるものはすべて使えます。もちろん、日本語も入れられます。カラープリンタですから色も自由。さらには、イラストも使えます。T.B.Sound のロゴマークも入れられます!

 シールには、逆さ文字にしてプリントします。インクが乾くのを待って、この上に糊の付いたシートを貼ります。



 貼り付ける前に、シートをカットします。余白が広いとパネルに残される糊の面積が増えますから、文字ギリギリにカットします。でも、小文字を入れると p とか y が下にはみ出してやりにくい。かといって、すべてを大文字にするのは好みでない。とにかく、台紙の上下のカットラインと文字の平行がズレないよう、慎重にカットします。



 単語が並ぶところは一つ一つ切り離すと高さ合わせが難しいため、貼り付ける幅にプリントアウトして、並べたままカットしました。一つ一つを切り離して「文字の両サイドに水平線を鉛筆で描くテクニック」を使えば並べられるだろう、と思われるかもしれません。はい。私も思いました。ところがこの転写シート、糊が強力です。一度パネルにくっつくと動かせません。しかも、台紙のついた文字が見えない状態で位置決めをしなければなりません。これが、やりにくい。経験的に、単語が横に並ぶときには微妙な傾きが目立ちやすい。ですので、妥協しました。

 パネルに転写シートを貼り付けた状態です。



 台紙は、濡らしてはがします。たっぷりと濡らして、一気にスライドさせるのがコツです。台紙を外したところがこちら。糊が付いた範囲が白く見えます。



 斜めからアップすると、糊の付いたところが目立ちます。



 転写したそのままでは,擦れると文字がはがれます。ですので、マスキング用カバーを作り、水性スプレーを吹きかけます。大体の位置に穴を空けて,糊の付いたエリアよりちょっと広い“窓”を作ります。写真では、下方の"POWER"の窓を現物合わせで拡張している途上です。



 マスキングカバーができたら、テープで位置を固定してスプレーします。このリアパネルでは、真ん中のACアダプタ用ジャックが、サブパネルを接着する際にくっついてしまって外せない。しかたないので、ここにもマスキングテープを。



 スプレーした出来上がりがこちら。写真では,糊は目立ちません(笑)。こちらのリアパネルにはジャックは入っていない。サブパネル接着時に、クランプで挟んでから(接着剤が乾く前に)ジャックを救出しました。



 仮組みしたところです。まだ、コントローラの電圧計が配線されていない・・・。



 転写シールの弱点は、白文字が作れないことです。シールの弱点というよりも、インクジェットプリンタに白インキがないためですね。ですから、ブラックパネルには使えない(文字をすべてカラーにすればできますけど)。

 アルミシルバーのパネルに黒系の文字ならバッチリです。

 

 さいごに、タイトル写真の D/Aアンプについて。


 このアンプは1993年に作りました(記事はこちら)。パネルのレタリングは今もきれいです。ただし、サトーの電源スイッチは軸が曲がっています。製作してからほぼ30年、若干の改造はしましたが、故障は一度もありません。実験のためにウッドケースから出して、側板も空けて、基板むき出し状態です。もちろん、いまも現役です。そうそう、最近購入した某社の高級ネットワークプレーヤよりもはるかに音がよい(笑)。



 やっぱり、まともな音で聞くには自作するしかありませんよね。


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