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EVR-323をマイナーチェンジしました

更新日:2022年1月17日


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 お恥ずかしい話です。図は、VR-323 / 320のレギュレータ回路です。表面実装型の431シャントレギュレータNJM7400(IC2とIC3)を用いて、Q1とQ2のベース電位を決めるシリーズレギュレータです。


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 この回路でのQ1とQ2のクオリティは、たいへんに重要です。アンプ回路に供給する電流は、アンプ回路の初段から終段までの電流の合計となります。すべての増幅段の合計電流、すなわち、すべての信号変化が合わさった電流を、このトランジスタはコントロールします。ですのでQ1とQ2は、ときとして、アンプ回路のトランジスタよりも音に影響を及ぼします。


 また、トランジスタのベースに加える基準電位の作り方も重要です。もっとも音がクリアなのは、入力電圧を抵抗R1とR2で分圧して、抵抗R2にキャパシタC3を並列にしたものです。ただしこの回路、C3を大きくすれば出力のリプルは減らせますが、入力電圧の変化に応じてQ1のベース電位が変化、すなわち出力電圧も変化する回路です。「基準電位」とはいえませんね。


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 「基準」となる電位を作るのに、もっとも簡単なのはツェナーダイオードでしょう。この方式、音は悪くありません。というよりも、下手なオペアンプでフィードバックをかけた回路よりは、よっぽど自然な響きを聞かせてくれます。もちろん、フィードバックを用いたほうが電圧の変動は小さくなります。「電圧を一定にすると音がよくなる」との見解を目にしましたが、電圧と音の因果関係はどうやったら説明できるのでしょうね。まあ、「音がよくなる」としか記していない人は、聞いてはいないのでしょう。聞いたのなら、どのように音が違うのかを述べられるはずです。


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 このツェナーを、NJM7400 に置き換えたものが、EVR-323のレギュレータです。ツェナーの、おっとりとしたというか、ボケッとしたというか、霞のかかったような音をクリアにしてくれます。

 ちなみに、トランジスタのベース電位を一定にするのではなく、出力電圧から NJM7400 のリファレンス端子にフィードバックすれば、出力電圧の変化はより小さくなります。それをしていない理由は、こちらの記事にて記しました。たんなる音へのこだわりです。


 さて、本題です。


 この回路のC3(とC4)、これが失敗の原因でした。EVR-3では33μFを使用していましたが、EVR-323 / 320ではこれを0.22μFにしました。OS-CONからX363への変更です。ところが、データシート(4ページ左下の図です)には、「容量によっては発振する場合がある」と記されていることを、たしかに読んだ記憶はあるのですが、失念していました。

 Vka = 17 Vで設計しましたから、0.22μFは危険範囲です。冒頭の回路で、C5とC6を使わないでC3とC4だけを入れたレギュレータボード出力は、88 kHz で発振します。


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 ところで、EVR-323のレギュレータ(ACタイプ)では、C3とC4だけでなくC5とC6を入れています。この状態では、発振はみられません。言い訳をすれば、試聴してもわかりません。なぜなら、出力に出てこないのですから…。ですので、見落として、じゃなかった、聞き落としていました。うかつでした。

 標準状態ではなにも聞こえないのですが、バッファボードに抵抗を追加してプラスのゲインを持たせたときに、“シャー”とノイズの入るものがありました。

 この原因特定に2日を要したのですが、オシロスコープのレンジを最大にすると、ノイズの入るものに不規則変動が観測されました。これが、MUSES 72323に影響を及ぼしたようです。


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 EVR-323 / 320 は出荷時に全数検査しています。信号出力のオシロスコープ確認は検査項目なのですが、電源電圧の拡大観察はしていませんでした。ですので、出荷したものにも不安定動作があると考えられたため、1月28日付けでリコール致しました。出荷済み分はすべて回収し、ご購入いただいたお客様にも対応致しました。


 対策品がこちらです。C3とC4の容量を68μFに増やしました。カップリングと同じRNSを使いました。これで不安定動作はありません。


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 対策では同時に、電源コネクタ逆指し保護用ダイオードを外しました。EVR-3ではロックなしのピンで電源供給していましたので、私自身が数回、保護用ダイオードに救われていました。その経験から、EVR-323 / 320ではシュラウド付きの電源コネクタにして、物理的に逆指しを防いだのですが、基板にはダイオードが残されていました。

 そのEVR-3の保護用ダイオードも、6品目ほどを試聴して、もっとも音質劣化の少ないものを選んだのですが、それでも、わずかですが音を平板的にしていました。それをなくしただけ、伸びやかな音になりました。


 これより改良品を出荷致します。よろしくお願いします。

(2020年2月7日)





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