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パワーアンプの出力を大きくすると音は悪くなる!

更新日:2022年9月12日


オーディオ界の常識とは反するかもしれませんが、聞いた経験からの結論です。



 10 Wのアンプと100 Wのアンプがあるとします。はたして、どちらのアンプがよい音がするでしょうか。


 なんとなく、最大出力の大きな方が音にも余裕があるように思えます。「パワーがあればあるほど、スピーカをドライブする力も強くなる」などと宣伝されます。たしかに自動車であれば、車体重量が同じならエンジン・パワーのある方が加速性能はよくなります。

 ところが、アンプの場合には最大出力が大きくても、スピーカの振動板を速く加速することはありません。振動板を早く動かすことは、それだけ高い周波数の信号を入力することです。いいかえれば、どれだけ早く動かせるかは、アンプの周波数特性が決めます。出力の大きさではありません。

 つまり、上記の宣伝は物理現象をいい表してはいません。はっきりいえば、妄想です。10 Wのアンプと100 Wのアンプがあったとしても、クリッピングさせない限り、振動板の動きは同じです。


 いうまでもありませんが、アンプの出力だけからは、10 Wのアンプと100 Wのアンプのどちらがよい音がするかはわかりません。


 ところが、舌の根も乾かぬうちに矛盾することを記しますが、メーカー製であれば、高価な大出力アンプの方が良い音がします。アンプの出力を大きくするためには、電源トランスを大きくし、ヒートシンクも大きくしなければなりません。ケミコン容量も大きくしなければなりません。

 このとき、パワーが10倍になっても、使っているパーツ代は倍にはなりません。ですから、パーツ代として必要な額以上に製品価格を高くできます。そして,その予算にできた余裕を、音質向上に使えるようになります。ケースも端子もしっかりとした構造のものを使うことができます。パーツも音の良いものをおごれるようになります。

 もっともメーカ製では、戦略的に値段が高い上位機種だからと、あえて音に差をつけられているでしょう。


 ところが、自作となると話は異なります。同じだけのパーツをおごってやるなら、100 Wのアンプは10 Wのアンプには勝てません

 なぜなら、パワートランジスタの音は、痩せて、色彩感の乏しいものばかりだからです。さらには、トランジスタでの損失を補うためにパラレル接続が用いられます。これがまた、僅かな特性の差が、微細な音を打ち消しあって、ディテールを聞こえなくします。


 ウソだと思われたら、試してみてください。パワートランジスタのコレクタ電流を小さくして、小信号トランジスタと比較試聴します。たしかに、ある程度のコレクタ電流を流した方がよい音のするトランジスタが多いです。ですから、最大で5 Aも流せるトランジスタに5 mAしか流さないで比較するのは不利な比較です。でも、同じトランジスタのコレクタ電流を変えたときに、どれだけ音が変化するかも、聞いたことがなければ語れないでしょう。

 私が聞いた限りでは、同一のトランジスタでコレクタ電流を変えたときの比ではありません。解像度そのものが違います。音と音の間が失われてしまうように聞こえます。情報量が違うと言うのでしょうか。残念ながら、コレクタ損失20 Wのトランジスタは500 mWのトランジスタにはかないません。


 ですから、出力は必要なだけとしたパワーアンプに、大出力アンプはかなわないのです。

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