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パラレル“バッテリー”ワールド7の音

更新日:2022年10月23日


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 やっと完成したバッテリー駆動パワーアンプ『パラレルワールド7』を持って、Uさんのお宅へとお邪魔しました。


 バッテリー駆動は、彼のリスニングルームでパラレルワールド6の電源を、ふつうのコンセントから無停電電源装置(UPS)に変更されたことが発端でした。Uさんからの「UPSにして、静けさが増してハーモニーがより美しくなった」との知らせに、「UPSでバッテリーのDCからACを作り、それをアンプの電源回路で再びDCに戻すよりは、バッテリーからDCで直接アンプ回路を駆動するほうがよいはずだ」と考えました。


 考えたからには試します。3種ほどでしたがバッテリーでアンプをドライブしたところ、鉛バッテリーは“にぎやかさを抑えた音”を聞かせてくれました。静かに聞こえるアンプは、ディテールを解き明かしてくれます。これは行けそうです。


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 バッテリー駆動で面倒なのは充電です。はるか以前に試したときには、4個のバッテリーを順番に充電する操作が面倒で挫折しました。ところが今回の構想では36個です。考えるのも恐ろしい。でも、いまならマイコンがあります。アンプをオフにしている間に充電をコントロールできる!

 そう考えて開発に取り組んだのですが、延々とアンプ、ならぬバッテリー充電器の作製に四苦八苦しました。幾たびかの変遷を経て、最後はなんてことない「ACアダプタに抵抗をつないだだけ」の充電回路となり、やっとのことで完成に至りました。


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 パラレルワールド7は、いい音です。不満なく鳴っています。もちろん、開発にあたっては、バッテリー駆動、真鍮基板、配線材など、個別の比較試聴を繰り返しました。個別のアイデアを組み合わせた結果が、悪いはずはありません。すべてによいほうを選択したのですから。

 それでも、組み合わせたトータルでどれだけのカイゼンとなったのかは“記憶の中の音”としか比較できていません。同じ回路構成、同じパーツのパラレルワールド6を、電源と基板(厳密には他にも変更箇所があります)をグレードアップした差がどれだけか。

 確かめるには、比較するしかありません。


 Uさんのリスニングルームにアンプを運び込み、梱包を解き、入力とスピーカケーブル(写真に細い線が写っています。どちらもBEL-RBT20276!)をつなぎます。AC 100 V はつながなくても動きます(バッテリー駆動ですから)。スイッチを入れて、ノイズのないことを確認。

 いよいよ音出しです!


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左奥上段:パラレルワールド6、左奥下段:EVR-X(Uさんが製作されたもの)

右手前:パラレルワールド7



​ ここからは、Uさんに語っていただきます。



 我が家ではながらく、パラレルワールド6が、真鍮の錘を背負ったユニウェーブスピーカを駆動していました。高音から低音まで静けさと明瞭さを兼ね備えたその音を不満なく楽しんでいました。ところが、AC 100 V を観測したところ正弦波とは似ても似つかぬ波形です。これが気になってしまい、ニチコンのポータブル蓄電システムESS-P1S1を導入しました。UPSによって、メロディを引き立てる弱音楽器がより一層クリアとなり、ハーモニーがさらに美しく表現されるようになりました。

 この経験を別府さんに伝えたところ、バッテリードライブの構想をいただきました。是非にとお願いし、心待ちにしていたパラレルワールド7が、ついにやってきました。

 パラレルワールド7は、静逸(せいいつ)さのなかに音楽のパッションが同居しています。フォルテシモのエネルギーだけでなく、ピアニシモの消えゆく響きにまで、考え尽くされた表現とでもいうのでしょうか、演奏家が伝えようとした想いが聞こえてくるかのようです。  パラレルワールド6も、ギターのサウンドをリズムに載せた音の流れとして、奏者の息吹を余すところなく伝えてくれると感じていました。それがパラレルワールド7では、弾かれた弦がギターの胴を震わせ、一つの音を空間へと放射されるまでを再現し、奏者の指先に秘められたテクニックが、それぞれに違えた音を創りだす様までも聞かせてくれます。  ステージのどこに奏者が並んでいるのかをパラレルワールド6は感じさせてくれますが、パラレルワールド7は、楽器からの直接音と壁からの反響音の差までも聞かせてくれます。ライブ会場にいるかの如く、自分の周囲を埋め尽くす音が、それぞれ明瞭に、だれが発したのか、どこからやってきたのかを伝えてくれます。

 じつは、パラレルワールド7のスイッチを初めて入れたとき、演奏のテンポが遅くなったかのように感じました。不思議だったのですが、じっくりと聞くうちに、より細部に至るまで音の形を、そして音場を、さらに緻密に表現してくれるために、一つ一つの音をより深く感じていたのだとわかりました。


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 我が家ではいま、パラレルワールド7がユニウェーブスピーカを駆動しています。私はその前で、さらなる感動をもたらしてくれるようになったCDを、とっかえひっかえする幸せな日々を過ごしています。

(4週間後にいただいた続報)


 以前は、深夜が一番よい音で鳴っていましたが、いまは、時間によらず聴きたい時に、よい音で聴けるのでとてもハッピーです。とにかく楽器の音が明瞭。余計な音がしないです。楽器が奏でる音だけを浴びられる充足感をステレオから体験できるとは、聞いたことのない人には多分理解できないんじゃないかな…、と思います。

 まぁ、それだけリアルさが際立っているのかもしれません。



 めでたし、めでたし。


 ですけど、パラレルワールド7が出かけていった我が家は、ちょっと寂しい。戻ってきた6を改造しようかな。


(製作記はこちら

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